『お伽草紙』より【カチカチ山】太宰治を、読んだ感想!

~【カチカチ山】と言えば、兎と狸の昔話です。

太宰治の【カチカチ山】は、人間味があり、リアルに書かれています。~

~かちかち山の物語は、甲州は富士五湖の一つである川口湖畔で起こった

出来事だそうです。

物語は酷なもので婆汁などというのはひどいし、縁の下に婆さんの骨が散らばって

いたとのくだりなので、そのため

カチカチ山の絵本は、狸が婆さんにけがをさせて逃げたと書き改めています。~

~太宰治の【カチカチ山】は美少女と愚かな中年男の恋物語です。~

《あらすじ》

カチカチ山の物語における兎は少女、そうしてあの惨めな敗北を

喫する狸は、その兎の少女を恋している醜男。

これはもう疑いを容れぬ厳然たる事実のように私には思われる。

(冒頭より)

兎は、十六歳の美少女(処女)で、狸はデブで愚純大食いで風采の上がらぬ中年狸です。

【カチカチ山】は、そんな狸がお婆さんを、殺して食べて山に逃げ帰って兎を見つけて

得意げに逃走劇の物語から始まります。

「よろこんでくれ!おれは命拾いをしたぞ。」

狸は、兎に会うと、いかに自分が勇気があり知恵を働かせたかを得意げに兎に語りかけました。

兎は、前から体はブヨブヨ、毛は、ベタベタ、口の周りはテカって、全体的に不潔で臭いし見れば見るほど

嫌気がしてきて不愉快になります。

喋りながら、蜘蛛やうんこも食べてしまいます。

年齢も、容貌も生活態度も、価値観もすべてがちがうのに愛人なろうと、狸は売り込んできます。

今回は、兎を可愛がってくれたお婆さんを謀殺し、汁の具にして食べてしまいました。
 

ショックを受けた爺さんが、狸汁にしょうとしましたが、狸は、山に逃げ込んでしまいました。

狸は、いかにも「おれは運の強い男さ。」と自慢し始めました。
 

ところが、兎は白けた様子で「私が喜ぶわけはないじゃないの。あの爺さん、婆さんは私のお友達よ。」

兎は、この時、狸に復讐を加えてやろうという気持ちが芽生えていました。
 

兎は狸に今度だけは特別に許してあげるけれども
気落ちしている爺さんに代わって山に柴刈りに行ってあげようと提案します。

狸は兎に許してもらえるだけでなく、一諸に柴刈りにまで行けると知って大喜びでした。
 

翌朝、兎は狸と山で柴刈りに、それぞれ刈った柴を背負って山を下ることにします。

この時、兎は蛇が怖いからと言って狸を自分の前に歩かせました。

火打ち石使って、狸の柴に火を放ちました。

「おや、何だい、あれはへんな音がするね。なんだろう。
お前にも、聞こえないかい?何だか、カチ、カチ、と音がする。」と狸、

「当たり前じゃないの?ここは、カチカチ山だもの」と兎。

「カチカチ山?ここがかい?」と狸。

可愛い兎の言うことは何でも信じる狸は、大火傷を負って
自分の穴ぐらの中にこもって一人苦しんでましたが、兎に騙されたとは露ほど疑っていません。
 

そこに、行商に化けた兎の薬(唐辛子)売りの声が聞こえます。

「仙金膏はいかが。やけど、切傷、色黒に悩む方はいないかい。」

「や、お前は、兎。」

「兎には違いがありませんが、私は男の薬売りです。」
 

狸は、よく似た兎もいるものだと思いながら、信じた狸は火傷なんかよりも、
色黒を直すことに、我を忘れて手のひらに載せてもらった薬を
自分の色黒の顔に塗りたくります。

ひどくひりひりするのを、良く効く薬だと勘違いした狸は、
身体にも塗ってくれと、兎に頼みます。

美しく高ぶった処女の残忍性には限りが無いです。
ほとんど悪魔に似ています。

兎は平然と狸の火傷に唐辛子をねったものを、こってりと塗ります。

狸は七転八倒します。
 

しかし、可愛い兎の気を惹くためだと思いましたが、
苦しみの余り、哀れなうわ言を、口走り、やがてぐったり失神の有様となります。
 

しかし、根が頑丈でしたから、十日も立たないうちに全快し
食欲どころか色欲まで取り戻し、また、兎のところに、のこのこ出かけました。


兎は、露骨に嫌な顔をしましたが、狸は一向に気が付きません。

それどころか、軟膏を塗ったのが兎であることもまだ気付いてないありさまです。
 

兎は狸に帰ってもらいたい一心で、またもや悪魔的な計画を提案します。

河口湖で狸の好物である鮒を捕りに行こうということになりました。
 

そしてなんでもしてくれる兎に、狸はすっかり亭主気取りです。

狸を騙して泥船に乗せると、狸はのんびり眠ってしまいました。

泥船に水がしみ込んできたため、目を覚ましましたが狸が騒ぎ出しますが

「うるさいわね、泥の船だもの、どうせ沈むわ。分からなかったの?」

平然と言い放ち、櫂で狸の頭を殴り始めます。
 

ようやく兎の悪計に気付いた狸ですが、時既に遅し。

最後は、「惚れたが悪いか。」って言って、ぐっと沈んで、それきり。

《私の感想》

~太宰治の【カチカチ山】は狸の恋心を利用して兎は狸を罠にかけます。

中年の狸は美しい処女の兎を、好きになり、何をされても関心を引きたい、

一心な思いで哀れな中年狸の姿を、浮き彫りにしています。

美しい処女の兎の話にのる、中年狸の、誘われればなんでもホイホイと

ついていき、あげくの果てには仇討されていく、中年狸の気持ちは哀れさを

感じてしまいます。

中年狸は滑稽でもありながら本人は、多分夢心地だったのかも知れません。~

太宰 治(1909~1948)

太宰治一流のユーモアとアイロニ-が詰め込まれた創作

昔話集『お伽草紙』は、太平洋戦争の終戦直後、昭和20年

(1945年)10月に刊行された。太宰がこの作品の報筆を、思い

立ったのは、空襲が激しくなった戦争末期の頃。

避難した防空壕で、娘をなだめるために絵本を読み聞かせて

いるうちに、それらの昔話の新しい解釈を思いついたのだった。

コメント