

〈逸題〉
今宵は仲秋名月
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒を飲む
春さん蛸(たこ)のぶつ切りをくれえ
それも塩でくれえ
酒はあついのがよい
それから枝豆を一皿
ああ 蛸のぶつ切りは臍(へそ)みたいだ
われら先づ腰かけに座りなほし
静かに酒をつぐ
枝豆から湯気が立つ
今宵は仲秋名月
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒をのむ
《私の感想》
~しみじみと、いい詩だと思いました。~
~詩というより、自由に思ったっまま表現している。~
~素敵です。~
~気取りもなく、いつも通りに表現出来ること。~
~さすがだと思いました。~
初恋を偲ぶ夜
われら万障くりあはせ
よしの屋で独り酒を飲む
~多分仲間と、予定を合わせ、飲むにつれて、
~初恋を偲び~
~独り酒を飲む。~


~よしの屋は、多分赤ちょうちんだと思います。~
~(安い酒)・(枝豆、蛸のぶつ切り)
~目に浮かんできます。~

~春さんは、チョッと背が低く、愛嬌のある小太りのおばさん。~
~まさしく、良き昭和の時代。
~味のある詩で心に残ります。~

~今宵は仲秋の明月~
~初恋を偲ぶ夜~
~素敵な表現です。~

井伏鱒二(1898~1993)
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