
幼い頃、【ちびくろさんぼのおはなし】を、読んで
虎たちは木の周りをぐるぐる回っているうちに、溶けてバ-タ-になってしまいます。
この場面がとても大好きででした。
【ちびくろさんぼ】と言う言葉の響きも可愛らしくって、大好きでした。

でも、一時期黒人権利団体が、差別的だと抗議してから、
最近復刊されるまで【ちびくろさんぼ】は絶版になってしまいました。
今思いますと、純粋に
【ちびくろさんぼのおはなし】を楽しんでいた頃が懐かしいです。
《あらすじ》
日本で初めての発売
【ちびくろさんぼのおはなし】
むかしあるところに 黒い男の子がおりました。
名前を ちびくろさんぼ、といいました。
お母さんは 黒まんぼ といいました。
お父さんは 黒じゃんぼ といいました。
黒まんぼうは、ちびくろさんぼに、
綺麗で可愛い赤い上着と 綺麗で可愛い青いズボンを
つくってくれました。
黒じゃんぼは、市場に行って、
綺麗な緑の傘と、そこが真っ赤で、
中も真っ赤な、素敵で可愛い紫の靴を買ってきてくれました。

どうです?
ちびくろさんぼは りっぱでしょう!
ちびくろさんぼは、
素敵な服をきて、綺麗な靴を履き、傘をさして
じやんぐるへ散歩に行きました。
しばらく行くと虎が出て来ました。

ちびくろさんぼは、ビックリして
通りかかった虎たちにたべられそうになるたびに
身につけたものを1つずつ渡して、許してもらうことで逃げることができました。
可哀そうなちびくろさんぼは、悪い虎たちに
素敵な服を全部とられ、泣きながら歩いて行きました。
しばらくすると
「ぐるるるる-」
という恐ろしい声がだんだん、大きくなってきました。
「たいへんだ」
と、ちびくろさんぼは急いで
やしの木のかげに かくれると、そっと あたりをみまわしました。
すると、虎たちが皆でけんかをして、
誰が一番りっぱな虎か、言い争いをしているではありませんか。
そして、しまいには、あんまり腹をたてたので
虎たちは、きゅうに立ち上がったと思ったら、
素敵な服をみんな脱ぎ捨て、
お互いに つめでひっかいたり 白い大きな歯で かみついたり
そして転がったり ひっくり返ったりしながら
ちびくろさんぼの隠れている、やしきの木の根もとまでやってきました。
虎たちは言い争ったり 取っ組みあったりしているうちに、
お互いの尻尾にくいついて
木の周りを、ぐるりと取り囲んでしまいました。
そこで、ちびくろさんぼは いいました。
「もし、綺麗な洋服いるのなら、そういってよ。
でないと 僕が持っていっちゃうよ」
それでも、虎たちは
おたがいのしっぽをはなそうとしなかったので、
ただ
「ぐるるるる-」
としかいえませんでした。
そこで、ちびくろさんぼは綺麗な服を皆着て、歩いていってしまいました。
それをみた虎たちは、ますます怒ったのですが、
あまりに腹をたてたので、相手の虎を食べてしまおうと、
木の周りを、ものすごい勢いで走って走って
あんまり早く走ったので、しまいには
とうとう、虎たちはすっかり溶けてしまいました。

木の周りに残ったものは溶けた、
ばた-(いんどではぎた-)池だけでした。
そこへ、黒ジャンボがとても大きな真ちゅうの壺をかかえて
仕事から帰ってきました。
「やあ なんてすてきな とかしばた-だ。 家に 持って帰って
黒まんぼに 料理をしてもらおう」

黒じやんぼは、その、とても大きなしんちゅうの壺に、
溶けたばた-を全部入れて、持って帰りました。
黒まんぼは大喜びで
「すぐに ほっとけ-きをつくて 夕食に 皆で一諸に食べましょう」
と言いました。.
虎のばた-で焼いたので 黄色と茶色にやけたほっとけ-きは、
まるで 小さな 虎のようでした。

黒まんぼは、ほっとけ-き27枚食べました。
黒じやんぼは、55枚食べました。
けれども ちびくろさんぼは、169枚も食べました。
とても お腹が すいていたのでね。
《私感想》
改めて読んでみて、インドの暖かい家庭と、
そこに伝わる民話として楽しく読みました。
虎たちは、自分たちに必要のないものを
ちびくろさんぼから奪い取り、
あげくは、溶けてしまうのですから、
欲ばりはよくないと 教えてくれてます。
でも、差別の問題など考えることが多い絵本です。
原作のモデルは、インド人だそうです。
後に改変され、
アメリカに住むアフリカ系黒人の少年に変わったことで、
1970年以降、人種差別との関連性が問われ始め、
その姿を消してしまうことになりました。
日本でも、そんな動きを受け批判運動などが起こり、
1988年(昭和63年)には、すべての出版社が絶版にしているのです。
人種差別の表現が、例えば主人公の「さんぼ」という名前が
アメリカとイギリスにおける、黒人に対する蔑称と共通しているということ。
最後にパンケ-キをたくさん食べるシーンが、
「大喰らいの黒人」
を馬鹿にしているのではないか、ということなどだそうです。
日本人の私たちが思う以上に、海外では
人種差別というのは身近で、根深い問題なのです。

ヘレン・バンナ-マン
誕生:1862年2月25日
死没:1946年10月13日(84歳没)
国籍:スコットランド
言語:英語
【ちびくろサンボ】をはじめとするこども
向けの絵本で知られるスコットランドの
児童文学作家・絵本作家
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