【山椒魚】井伏鱒二を、読んだ感想!

~【山椒魚】は、岩屋の中で大きくなってしまったために

岩屋から抜け出すことが出来なくなったお話です。

自由を、奪われた、山椒魚の切実な思いも伝わってきます。

40分くらいで読めてしまう短編小説ですが、奥の深い作品です。~

〈あらすじ〉

山椒魚は、悲しんだ。

山椒魚は、ある時すみ家にしていた岩屋から出られなくなっていることに気がついた。

二年間の間に山椒魚の体が発育して、大きくなり、頭は出入口をふさぎ、

コロップの栓となるようにすぎなかった。

山椒魚は体を前後左右に動かすことができただけである。

山椒魚は岩屋の出入り口に顔をくっつけて岩屋の外の光景を眺めることを好んだのである。

めだかの群れが先頭の動きにあわせて一匹が、よろめくと

他のめだか達もことごとく、よろめくのを見て嘲笑してしまった。

水面は絶えず緩慢な渦を巻き、白い花弁は淀みの水面に円周を描き速力をはやめ、

その中心点に花弁は吸い込まれてしまった。

山椒魚は今にも《目がくらみそうだ。》と呟いた。

ある夜、一匹の小えびが岩屋のなかへまぎれ込んだ。

山椒魚の横腹を岩石だと思い込んでそこに卵を産み付けていたが、

さもなければ何か一生懸命に物思いにふけっているらしい。

山椒魚は得意げに言った。

「くったくしたり、物思いにふけったりするやつは、莫迦だよ。」

山椒魚は全身の力を込めて岩屋の出口に突進した。

出口の穴に頭がつかえて、こんどはコロップの栓をぬくため、

再び全身の力をこめて後ろに身を引かねばならなかった。

この光景に、小えびはひどく失笑してしまった。

山椒魚は、そのあとも再び外へ出ることを、こころみたが徒労に終わった。

山椒魚の目から涙がながれた。

「ああ神様!あなたはなさけないことをなさいます。

たった二年間ほど私がうっかりしていたのに、

その罪として、一生涯このあなぐらに私を閉じ込めてしまうとは横暴であります。

私は今にも気が狂いそうです。」

山椒魚は、岩屋の外で自由に、水面に大小の水すましが遊び、

蛙の出現に、驚く姿に、感動の瞳で眺めていたが、

寧ろ目を避けたほうががいいと気が付いた。

山椒魚は目蓋をとじたが、目を閉じるということが巨大な暗闇を決定したのである。

「ああ寒いほど独りぼっちだ!」と言ってすすり泣いた。

悲歎にくれている山椒魚はよくない性質を帯びてきた。

ある日のこと、岩屋の窓から紛れ込んだ一匹の蛙

(この蛙は、淀みの水底から水面に、水面から水底に勢いよく往来して、山椒魚を羨ませた蛙である。)

山椒魚は、自分と同じ状態に置くことが出来るのが痛快であった。

蛙は安全な窪みに入り山椒魚と、激しい口論をはじめた。

「俺は平気だ」 「出てこい」

「お前は莫迦だ」 「お前は莫迦だ」

彼らは罵り合う言葉を、翌日も、その翌日も同じ言葉で自分を主張した。

一年の月日が過ぎ、山椒魚は岩屋の外に出て行くべく頭が、肥大しすぎていたことを、

すでに蛙に見ぬかれてしまった。

更に、一年の月日が過ぎた。

最新の注意をしていたが、ところが、山椒魚より先に蛙が、《歎息》がもらしてしまった。

「ああああ」

もっとも小さい風の音であった。

山椒魚はこれを、聞き逃す道理はなかった。

もう、空腹で動けない蛙に、山椒魚は友情を、

瞳にこめて、「もう、そこからおりてきてもよろしい。」

蛙は「空腹で動けない。もうだめなようだ。」

よほど暫くして山椒魚はたずねた。

{お前は今どういうことを考えているようなのだろうか。」

蛙は、極めて遠慮がちに

「今でもべつにお前のことをおこっていないんだ。」

《私の思い》

~「ああ寒いほど独りぼっちだ!」山椒魚のすすり泣き声が

岩屋の外にもれていたのを、蛙は聞いていた。

(山椒魚の悲しみも、意地悪くする心も)蛙は分かっていた。

だから、蛙は最後のセリフで「いまでも、べつにお前のことをおこっていないんだ。」

蛙は、山椒魚と、喧嘩をするのではなく、

山椒魚の今までの岩屋の生活を哀れんでいたと思う。~

~井伏鱒二が、山椒魚を通して言いたかったことは、人生に対しての生きる姿勢だ。

人を批判をしたり、中傷したりすることがどんなにも相手を傷付けるか。

(自由を、奪われた、山椒魚) は、

蛙に対して意地悪な心、でも、隠せない自分への心、

山椒魚と、蛙が同じ状況に陥った時、孤独から抜け出し、お互いの思いやりに気が

ついたことだと思う。

井伏 鱒二

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