

【サ-カス】

幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風(しつぷう)吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
今夜此処(ここ)での一(ひ)と殷盛(さか)り
サ-カス小屋は高い梁(はり)
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒(さか)さに手を垂(た)れて
汚れ木綿(もめん)の屋蓋(やね)のもと
ゆあ-ん ゆよ-ん ゆやゆよん
それの近くの白い灯(ひ)が
安値(やす)いリボンと息を吐(ふ)き

観客様はみな鰮(いわし)
咽喉(のんど)が鳴ります牡蠣殻(かきがら)と
ゆあ-ん ゆよ-ん ゆやゆよん
屋外(やぐわい)はマ真ッ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
夜は劫々(こふこふ)と更(ふ)けまする
落下傘奴(らくがさめ)のノスタルヂアと
ゆあ-ん ゆよ-ん ゆやゆよん
《私の感想》
~【サ-カス】は私の青春時代を思いだしました。~

~ゆあ-ん ゆよ-ん ゆやゆよん~
~この言葉の響きが大好きでした。~
~改めて【サ-カス】中原中也を読みますと
言葉のリズムがとても魅力的です。~
~【サ-カス】は郷秋、寂しさを感じてしまいます。~
~【サ-カス】は現実の【サ-カス】ではなく
中原中也の世界感だと思います。~
~不思議に、具体的に姿を思い浮かばせてくれる【サ-カス】~
~見えることもないブランコ~
~同じ言葉の繰り返し~
~技術的な連結の繰り返し~
~私の心に【サ-カス】の華やかな見えることもない
ブランコが映画のシ-ンのように浮かび上がってきました。~

中原中也(1907~1937)
コメント