【山のトムさん】(中)石井桃子を、読んだ感想!

【山のトムさん】は、私たちが、忘れていたものを、気づかせてくれる心和む物語です。

《あらすじ》 (中)

トムが、病気になりました。お腹が、悪くなったのです。病気の原因は、分かりません。

トムは、雑巾がけの水を飲むのが好きで、家でも困っているのです。ただの雑巾がけの水ではなく、硫黄の入った、雑巾がけの水を、飲んだからではないかと、トシちゃんは言いました。

山の家では、皆が、夏の終わり頃から、次々に体のかゆい病気になりました。

お腹や、背中に汗ものようなポツポツが、沢山出来ました。そして、体中が火照ってくると、なんとも言いようのないかゆさで、頭の中がいっぱいになり、きちがいにでもなるのでは、ないかと思えるほどの苦しさでした。

皆の頭にひらめいたのはは「カイセン」という、恐ろしい名前です。早速、町へ行く人に頼んで「草津のもと」や「硫黄泉」などという薬を買って来て貰いました。

ところで、トムの病気が始まったのは、この皆が硫黄のお風呂に入っていた頃なのでした。

朝晩、池の水が冷たくなってきたので、時々雑巾がけの係りのトシちゃんは、「硫黄が入ってもいいね?」と言ってお風呂のお湯で板の間を拭きました。それを飲んだのが、トムの病気の原因だろうと、トシちゃんは言うのです。

いつの頃からか、家の人たちは、トムが、まだ火も入っていない茶の間のコタツの中に、入りたがることに気がついていました。

秋風の身に染みる頃「とうとう、今年もコタツ開きだね。」などと言いながら皆で夕食にかかりました。

その時、(ぷうん!)と、皆の鼻をさした、(異様な臭い!)皆は、顏を見合わせました。「くん炭みたいな臭いだね。」と妙な顏をして、ハナおばさんが言いました。くん炭は、肥しを焼いてつくる肥料で肥料としては大変良くきくのですが・・・。

アキラさんが、「トムのうんちだよ。」とコタツを覗きながら言いました。トムは、もう半分大人でしたから、台所の隅の砂箱は、随分前にお払い箱になっていました。かわりに、今は、山じゅうが、トムのお便所になっていました。

トシちゃんたちの「かいかい」が全快するのと入れ替わりに、トムのお腹は本格的なものになりました。家じゅうの人が、トム用の雑巾を用意して、トムが変な恰好をするたびに、後を追いかけて、歩くようになりました。

朝、起きると、おばさんは、「やれやれ!」と言い汚れものを縁側に持ち出して、クレゾ-ル石鹸のお湯で丁寧に拭きました。

トムは痩せました。そして、ぐったりと、コタツの上で寝ていることが多くなりました。

やがて、冬になり新のお正月も過ぎて春から秋の終わりまでは、お母さんは、子どもたちが学校へ行っている間、近所の娘さんたちを集めて、お裁縫を教え、お裁縫を教えられないハナおばさんは、みんなに本を読んであげたり、お話をしたりしました。

トムは、お天気の日なら、縁側で、この秋、おかあさんたちのとった五俵のお米の頂上に、横になり、日向ぼっこをするのが、日課でした。お昼がくると、お腹の悪いトムはお腹が減りました。ハナおばさんが、作るトム用の雑炊をたいらげると、今度は娘さんたちのお弁当に、

根気よく、お昼ごとに奥でお座りを続けますのでトムの病気はまた、長引きました。

旧正月がくると、山の家ではハナおばさんが、東京へ行くのです。ハナおばさんは、この上京を楽しみにして半年も前から予定を立てていました。おばさんの会いたい人が二十人ばかりいますので、二週間くらいはかかります。

山の家では、この頃、大分、家族が増えて、ヤギのメ-とトムの他に、メンヨウ二匹それにウシの次郎もいました。

だから、お裁縫の娘さんのお休み日にも、お母さんは朝から、かなり忙しく、退屈する暇はないのです。けれども、お母さんが、本当に話相手、相談相手にしているのは、おばさんです。

やがて、もう時間だとおばさんに声をかけました。

おばさんは、急いで縁側に出て痩せたからだを、五俵の米俵の頂上に、沈み込むようにからだをのばしているトムに

「トムや、行って来るよ。死んじゃ駄目だよ。」おばさんが、白い胸へ鼻をおっけるように、して言うと、トムは小さくゴーロゴロ、のどを鳴らして、目をつぶりました。おばさんが、東京に出てから、山は寒波に襲われました。夜、おばさんが、いないのでトムは変わりばんこに皆の寝床を巡回して鳴きましたが、朝になると、皆はうんざりしました。お母さんは、ため息をつきながら、お掃除におおわらわでした。おまけに、トムはお腹が痛いのでしょう、「イイイ…」と鳴いてしゃがみこむようになりました。おかあさんは、小さいバケツに、(クレゾ-ル)を溶かして、トムの鳴き声のはじまるごとに、雑巾をひっさげて、飛んで行くことにしました。けれども、昼間は飛んで行くとしても、困るのは夜でした。おばさんが、東京に出て一週間もした頃、お母さんは、疲れ果てて青い顏を、しはじめました。ある朝、布団じゅうを汚されたアキラさんが「トム、山においてきちゃおうか?」「ハナおばさんが帰って来たら、僕が、トムは病気がひどくなって死んだって言うよ。」「うむ…」お母さんは、どちらともつかない返事をしました。

東京からは、ハナおばさんが毎日のように忙しいのか、走りガキをしたような手紙かハガキが来ました。必ず(トム元気になれ!)と、書いてあります。とうとう困りぬいた三人は、考えに考えて、水がめの下の小さい戸棚に座布団を敷き、湯たんぽを置き、その上にぼろ毛布をおいてやったら、素晴らしいトムの部屋になるではありませんか!この考えに、皆はキャツキヤと言って喜びました。準備が出来ると、優しい声をかけながら、そこへトムを押し込み、ピタリと戸を閉めて、しんばり棒をかいました。ガリリ、バリリ・・・トムは中から戸を引かき、それから、「イヤオ-、イヤオ-。」と、皆を呼びました。「静かに、静かに。」三人は、音を立てないように、寝床に入りました。

その夜は、皆はこの悲しい鳴き声に、かなり遅くまで眠れませんでしたが、そのうち、ふっと静かになりました。

ところが、次の朝、寝不足の頭で起きだし、あくびをしながらその、戸棚を、開けたお母さんは「あっ!」と言いました。これも、あくびをしながら、よたよた出てきたトムのからだは、うんちだらけでした。

三人総がかりで、スト-ブをたき、トムをしぼったり、裏がえしたりして乾かさなければなりませんでした。トシちゃん推奨の妙案も、まんまと失敗に終わりました。

その日の夕方でした。雪の中を、畜舎へ、餌をやりにいったお母さんは、腰の抜けるほどびっくりしました。メンヨウのモ-が、お腹を引きずるようにして、頭は天井に向け、ウ-ウ-と唸っているでは、ありませんか。

「アキラさんよう!大変だァ!直ぐこィ!」細かい雪の中、アキラさんが飛んで来ました。伝染病かもしれないと、言うことでアキラさんは獣医さんの所へひとっ走りに行きました。獣医さんは留守だったと悲報を、伝え三人はひっそりとご飯を食べ、トムは二重三重におむつにくるまれてお母さんに抱かれていました。

次の日は日曜で、昨日に変わって、外は眩しいようなお天気です。アキラさんが畜舎の方からウ-オ-とさけんでトシちゃんも畜舎に行き二人で叫びっこになりました。

おかあさんも、畜舎に飛んで行き「子っこだ!」昨日までいなかった小さい奇妙なものが、ひょろひょろ足でからだの平均をとりながら三人を見上げていました。

お母さんは、いつの間にか、二人の手を確り握り、三人は顏を見合わせ、幼稚園のこどものように笑って、跳ねて、また声を揃え、涙を流して笑いました。

その時、人の好さそうな老獣医さんが来てくれました。老獣医さんは、「これは立派な子っこだ。」「メンでがす。」と、大きな声で言いました。

老獣医さんは、熱心に、断尾(うまれたメンヨウの尻尾をきること)のやり方を説明しました。薬、ハサミも学校へ行く孫に渡すから、その子から受け取るようにとアキラさんに言いました。家の方へ坂を下りた時、おかあさんは、「先生、申し訳がぁしぇんが、もう一匹見て頂きたいものが、おらの家で、一ばんの重症患者!」と、おかあさんは、老獣医さんに言いました。

こうして、思いがけず、二月のある晴れた日に、トムは親切な老獣医さんの手あつい、診察を受けることが出来たのでした。やはり、重い腸カタルで原因は分かりません。

そして、この日から、重かったトムの病気も薄紙をはぐように良くなりました。このことを、知らせてやった東京のハナおばさんからは、「バンザイ、メンヨ・トム」という電報がきました。

そして、それを追いかけるようにして、東京の殺人的満員電車にもみくちゃにされた、ハナおばさんがへとへとに、なって帰って来ました。

トムは、五俵の米俵の上の王座にのぼり、天下をヘイゲイするさまが、お座敷にいるお裁縫の娘さんやおかあさんたちに、影絵のように見えました。

《わたしの感想》 (中)

野性味のある行動で山の家の家族をふりまわし、トムのおかげで、家族には笑いが絶えなくなります。今回は、トムの病気で心配しましたが、よくなって安心しました。

次回も、色々なことがおきますが、宜しくお願いいたします。

☆今年も、色々とチャレンジしますので、ワード図形(夢二)の(絵)も宜しくお願いいたします。

イラスト:harue-31

コメント