
《わたしの思い》
ジャヴェ-ル刑事は、罪を許すことが出来ない刑事。
警官としては、申し分がないかも知れないが、正義を曲げることも人間としては必要ではないか?と感じてしまう。すべて、犯罪は悪と決めてしまうシャヴェール刑事にわたしは、一抹の寂しさを覚えてしまいます。
《あらすじ》③
以前とは、変わって活気のある町になっているモントル-ユに帰って来た、フアンティ-ヌは黒い飾り玉を作っている、マドレ-ヌ氏の工場に雇って貰うことが出来ました。

ところが、一年ほど経った頃、ファンティ-ヌには隠し子があるという噂がたち、それが工場の監督の耳に入りました。ある朝、監督に呼び出され、五十フラン渡されて「あすから、工場へ来なくってもよろしい。」と言い渡されました。泣いて頼みましたが駄目でした。監督は、口の悪い女たちからの噂を信じて、マドレ-ヌ氏には何も相談せずに、勝手に辞めさせてしまい、ファンティ-ヌは酷くマドレ-ヌ氏を恨みました。
仕事は見つからず、隠し子を持っている、ふしだらな女という評判が町中に広まってやっとのことで兵隊のシャツを縫う仕事で、一日に僅か十二ス-しか貰えません。テナルディエは頻繁に金を催促してきました。コゼットに毛糸の服を作ってあげたいので十フラン余分に送って貰いたいと書いてありました。フアンティ-ヌは、寒い冬の間、火にもあたらず食事も満足にとらなかったので、丈夫でない体は、すっかり疲れ切ってしまいしっこい咳と熱がでて体がだるくてたまりませんでした。

ファンティ-ヌは、どうすればよいか分からなくなりましたが、理髪(りはつ)店の主人に自分の美しい金髪を十フランで買って貰いました。そのうちに、またテナルディエから手紙が届きコゼットがはしかに掛かったので、高い薬を飲ませなければならない、直ぐに四十フラン送ってほしいと、書いてありました。ファンティ-ヌは、あまりのことに呆れましたが、今度は歯医者に行き、綺麗な前歯を二本抜いてそれを売りました。

この頃は、入れ歯をするのに他人の本物の歯を使っていました。

1823年のはじめ、大雪の降った日の晩、今は飲食店で働いているファンティ-ヌにその辺りをうろつく若者たちに歯の抜けた顏が、おかしいと言って道に積もっている雪をつかんで彼女の襟首に押し込みました。余りの悔しさに、ファンティ-ヌは人々が見ているのも忘れて、泣きながらその男にむしゃぶりついたり、ぶったりひっかいたりしました。

そのとき、人だかりの中からシャヴェ-ル刑事が現れ、ファンティ-ヌを、通行人に乱暴を働くけしからん女だといって逮捕し警察に引っ張って行きました。警察で、どんなに訳を説明しても、聞いてもらえませんでした。「おまえが、どんな女かはちゃんと分かっているのだ。六ケ月刑務所に入って貰う。」と、シャヴェール刑事は冷ややかに言いはなしました。ファンティ-ヌは、必死になって叫びました。「ああ、私のコゼットは、どうなるのだろう!刑事さん、お願いです。」
そのとき、マドレ-ヌ市長が入ってきました。刑事さん、この女性を牢に入れるのは正しくありません。わたしは、あの現場に居合わせた人たちから証言を聞いているのです。けしからんのは、乱暴を働いた男たちの方なのです。」フアンティ-ヌは、マドレ-ヌ市長だと知って驚き自分を工場から追い出して今は、自分を救ってくれようとしているのです。彼女にはどういうことなのか、まるで訳が分からなくなっていました。
市長とシャヴェールは言い争っていました。〈うむ〉を言わせぬ強い言葉でマドレ-ヌ市長が言ったので、シャヴェール刑事は不服そうに部屋を出て行きました。そして、マドレ-ヌ市長の口から、彼女のが工場を辞めさせられた本当の事情を知らされました。彼女は床にひざまずき、嬉し泣きに泣いていました。

マドレ-ヌ氏は、体の弱っているフアンティ-ヌを、直ぐに自分の経営するカトリックの修道女たちが看護師として献身的に尽くしてくれる病院に入院させました。
マドレ-ヌ市長は、フアンティ-ヌの身の上を調べどんなに気の毒な境遇にあるかも知り、テナルディエにかなりの金を送りフアンティ-ヌは、病気だから直ぐにコゼットをれてくれるように伝えました。ところが、テナルディエは、コゼットを連れてこないばかりか、いいかもが引っ掛かったとばかりに、ますます金をせびる始末でした。
マドレ-ヌ氏は、毎日三時に決まってファンティ-ヌを見舞い、医者から彼女の命はもう長くはないことを告げられました。マドレ-ヌ氏は自分で手紙を書き、ファンティ-ヌに署名させて、「わたしが、自分でコゼットを連れてこよう。」と言いました。
あくる日、マドレ-ヌ氏は、コゼットを引き取りに出かけるための準備をしている時に、いつもと違って酷く、(うかない)表情のシャヴェ-ル刑事が尋ねて来ました。「実は、わたしを免職にするよう、本部に申し入れていただきたいと思いまして・・・」「それは、出し抜けに、また、何故ですか?」「わたしは、あなたを、二十年昔にツーロン刑務所で見たジャン・バルジャンと同一人物だと思っていたのです。刑務所を出てからも、司教のところで盗みを働いたらしいのですが、それっきり行方が知れていないのです。わたしは、あなたを、ジャン・バルジャンだと警視庁へ告発してしまったのです。」「つま、り本物のジャン・バルジャンがつかまったのです。」それを聞くと、マドレ-ヌ氏は何とも形容できないような、苦しそうな声を喉の奥から出しました。シャヴェールは、自分の思いだけを追うような表情で話しを続けました。「そのいきさつを申しますと、その男はある司教のところで、銀の食器を盗みアラスの刑務所に入れられたのですが、もとジャン・バルジャンを知っていた囚人が、こいつはジャン・バルジャンだ、といったのです。そこで、やはりツーロンでジャン・バルジャンを見知っていた別の三人の囚人にも対面させたのですが、答えはやはり同じでした。丁度、わたしが市長を告発した時と同じでしたので、わたしは直ぐにアラスまで行ってこの目で見てまいりました。」「それで?」「残念ながら、その男は間違いなくジャン・バルジャンでした。」

マドレ-ヌ氏は、うめくような声で言いました。「その男はなんといっていましたか?」「わしはジャンマティウというもので、ジャン・バルジャンではない、と申しておりました。」マドレ-ヌ氏は、何故か落ち着かない様子で、またシャヴェールに尋ねました。「それで、アラスの裁判はいつ開かれるのですか?」「明日です。多分一日で終わると思いますが。」「そうですか。」マドレ-ヌ氏は、頷いて部屋の片隅にじっと目をむけました。
マドレ-ヌ氏は、我に却って「あなたは、立派な警察官です。免職などには出来ません。さ、引き取ってください。」シャヴェールの足音が遠ざかって行くのを聞きながら、マドレ-ヌ氏は、深い思案の底に沈んでいきました。

マドレ-ヌ氏が、かつてのジャン・バルジャンであることは改めていうまではないです。
ミリエル司教の高貴な心に感化され、まともな人間になるように懸命に努力してきた決果が今のマドレ-ヌ氏なのです。
しかし、ジャヴェ-ル刑事の言葉はマドレ-ヌ氏の胸に恐るべき一撃を加えたのでした。一人の罪のない人間が、わたしの犠牲になろうとしているのだ。わたしは、それでも平気で、そ知らぬ振りをしてよいのか?ああ、わたしは、どうしたらいいのだろう・・・?
《わたしの感想》
ジヤン・バルジャンは、ミリエル司教との出会いで悟りの境地、心の状態を得られました良い人との出会いは、人生を大きく左右させられるものだと思いました。
次回④は、確信に迫ってきます。宜しくお願いいたします.。
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