

猿島(さるしま)の物語は不思議な話であもり妖怪のようです。
昔は、天変地異(天変と地震)など空や地上に起こる異変を、大蛇や法螺貝の化身に
求めたのかも知れません。
《 あらすじ 》
昔、木更津(きさらづ)の中州(なかす)に途方もなく大きな法螺貝(ほらがい)が住んでいたそうです。

その大きさといったらちょっとした山ほどもあるので、法螺貝が寝返りを打てば地震が起こり、あくびすれば嵐が吹き、いびきをかけば海鳴りがし、くしゃみをすれば高波が起こりました。
師たちは、この法螺貝を木更津の主と言って、怖れていました。

ある日、法螺貝が、
「もうずいぶん長い間、ここにじ—っとしていたから飽きてきたなぁ。たまには、どこかに出かけてみるか。そういえば、龍宮(りゅうぐう)というたいそう、きれいなところがあると聞いたな。そうだ、そこに行ってみょう」
と龍宮見物に出かけることにしました。

「この木更津を出て、まずは下総(しもうさ)の印旛沼(いんばぬま)まで行き、それから常陸(ひたち)の霞ケ浦(かすみがうら)へ抜ければよいな」
法螺貝は、道順を確かめ、支度(したく)をすませて、のそのそと出かけました。
何しろ法螺貝は、中州の外に出るのが初めてなので、慎重に慎重に進んでいきました。
そして印旛沼まで行き着きました。

ところが印旛沼の主である大蛇(だいじゃ)が法螺貝の龍宮行きのうわさを聞いて待ち構えていました。
「きさまか、木更津の主というのは。おれさまの断りもなくこの印旛沼を通ろうとするとは、けしからんやつだ。よし、通れるものなら通ってみろ」
と、たいそう怒っていました。
けれど法螺貝もここまで来たからには、引き返すわけにもいきません。
「おれは長い間、木更津でじっと動かずにいた。それをようやく決意してわざわざ出かけてきたのだ。邪魔(じゃま)をしないで通してもらおう」
と法螺貝は言いました。
しばらく法螺貝と大蛇のにらみ合いが続きましたが、互いに譲(ゆず)ろうとしません。

ついに、闘いが始まりました。
両方とも恐(おそ)れを知らず、引くことも知らずに飛びかかりました。
空には暗雲が立ち込め、雷が鳴り響きました。
法螺貝が大蛇に攻撃(こうげき)をしかけると地震が起き、大蛇が法螺貝に攻撃をしかけると大洪水が押し寄せます。
天も地も海も、大変な事態になっていました。
法螺貝と大蛇が闘い始めてから、とうとう七日七夜(なのかななよ)がたちました。
法螺貝がいよいよ最後の力を振り絞(しぼ)って、とぐろを巻いている大蛇を地面ごと「えい」と、内海めがけて蹴(け)り上げました。

すると大きな地震が起こり、大蛇は空を抜けて横須賀の沖まで飛んでいってしまいまし
「どぼ—ん」と大きな音を立てて大蛇と地面が海に落ち、天に届くほどの水柱があがりま
やがてあたりに静けさが戻ってみると、大蛇が落ちた横須賀の海には、ぽっかりと島が一つできていました。
法螺貝が蹴り上げた地面が下総の猿島郡(さるしまぐん)というところだったことから、横須賀に浮かぶその島を「猿島」と呼ぶのだそうです。

このあと、大蛇をやっけた法螺貝が、無事に龍宮に行けたかは誰も知らないとのことです。
《 わたしの感想 》
大きな法螺貝と大蛇は、猿島の歴史に残ると思いますが昔の人は妖怪変化と思ったのではないでしょうか。
これらの伝説は、猿島に訪れたきに自然に触れて心が安らぐと思います。
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