【犬島の由来】(岡山県)ふるさとの昔話を読んだ感想!

【犬島の由来】(岡山県)

【犬島の由来】(岡山県)の話は、伝説として伝えられています。(金ひり犬)と呼ばれる話型(わけい)です。
菅原道真(すがわらのみちざね)の犬が登場することで伝説化しています。

《 あらすじ 》

昔昔、菅原道真が都から熊野詣(くまのもう)での旅に出ました。

道真は、わが子のようにかわいがっている犬を連れて、都から幾日もかけて記ノ川の渡し場までやってきました。けれどそこまで来て、どこかに路銀(ろぎん)を落としてしまったことに気づきました。困った道真は、渡し舟の船頭にたのんでみることにしました。

「船頭さん、お願いがあります。私は来る途中で路銀を落としてしまったようです。熊野詣での帰りに必ず渡し代を払いますから、どうか向こう岸まで乗せてくださいませんか」
いやいや、ただで乗せるわけにはいかねぇな」「それでは、代わりにこの犬を預けますから」

道真はそう言うと、連れてきた犬の頭を撫(な)でました。「その犬っころが渡し代の質(かた)だと。お客さん、冗談を言わねぇでくれよ」船頭は、道真と犬を見比べながら馬鹿にしたように笑いました。

いえいえ、これはただの犬ではありません。犬っころなどと言っては罰があたりますよ」道真がそう言うと、犬は尻尾(しっぽ)を振って船頭のほうを見ました。

「ただの犬ではないとは、どういうことだい」「この犬におわん一杯食わせれば、小判を一枚産みます」

(まさか、そんなことがあるか)船頭は馬鹿馬鹿しいと思ったが、(いやまてよ、小判か。試してみるのも悪くないな)と思い直しました。「よし、向こう岸まで乗せてやろう」船頭は道真と犬を一諸に舟に乗せ、すぐ漕(こ)ぎ始めました。

舟はやがて向こう岸に着きました。道真は、舟から降りるときに言いました。

「船頭さん、この犬は確かに小判を産みますが、食わせる砂は一日一杯だけにしてください。決してそれより多く食わせてはなりません。お願いしますよ」

そして船に残っている犬に、「少しの辛抱(しんぼう)じゃ。必ず、迎えにくるからな」と声をかけると、優しく頭を撫でました。

犬は別れを惜(お)しむかのよに、クーンクーンと悲しそうに鳴き、舟べりに座って道真のうしろ姿をいつまでも見ていました。

道真が去ると、船頭は早速、道真の言葉を試したくなり大急ぎで家へ帰りました。そして周りにひとけがないのを確かめ、犬に砂を一杯食わせてみました。

すると言葉どおり、犬は一枚の小判を産み落としたではないですか。

「おお、あの男の言ったことは本当だったのだ」船頭は大喜びで、次の日も一杯の砂を食わせると、また小判を一枚産みました。

「こりゃあいい。宝の犬だ。もう船頭の仕事など止めじや、止めじゃ」こうして船頭は犬に毎日一杯の砂を食わせては小判を産ませ、仕事もせずにごろごろと過ごすようになりました。

そしてある日、(もっとたくさん砂を食わせれば、もっともっと小判を産むんじゃないか)と道真の言葉も忘れて、二杯の砂を食わせようとしました。

けれど、犬はなかなか砂を飲み込みません。腹を立てた船頭は、犬の口に無理やり、砂を押し込みました。

すると犬は苦しそうにクゥ-ンと鳴くと、ばたりと倒れ、死んでしまいました。そして不思議なことに、その場で見る間に石に変わりました。

「なんだ、犬ころがただの石ころになっちまった。こんなもん、もう用はない」船頭は石になった犬を担(かつ)いで紀ノ川へ投げ捨てると、どこかへ姿を消しました。

それからしばらくして、無事に熊野詣でをすませた道真が、大急ぎで紀ノ川の渡し場へ戻(もど)ってきました。ところが、来るときに乗ってきた舟はつないであるが、船頭の姿はどこにもみえません。心配になった道真は、ほかの船頭に聞いてみました。

「犬を連れている船頭を知りませんか」

「犬?ああ、そういえば、小判を産む不思議な犬を手に入れたとか言っていた船頭がいたな。だけどそいつは、その小判でもう充分暮らせると言って、どこかへ行ってしまったよ」道真はびっくりして、犬を預けたことを今さらのように後悔(こうかい)しました。

けれど、都では大事な仕事が待っています。犬の行方は気になったが、道真は犬の無事を祈りつつ、うしろ髪(がみ)を引かれる思いで仕方なく都へ帰って行きました。

月日が流れ、道真は右大臣まで昇りつめたが、左大臣の謀略(ぼうりゃく)にかかって九州の大宰府へ左遷(させん)されることになりました。

舟に乗るため瀬戸内の港へ行くと、冬の海は穏やかで凪(な)いでいました。道真を乗せた舟は大宰府目指して、すべるように沖合へむかいました。

しばらく進むと、突然、穏やかだった海に大きな渦巻(うずまき)が起こりました。そして海がどどどどど―っと唸(うな)りをあげると、たちまち高波が襲(おそ)ってきました。舟は激しく揺(ゆ)れ出し、今にも渦の中に吸い込まれそうでした。その舟をこいでいた船頭はなす術(すべ)がなく、あわてふためくだけでした。

そのとき、どこからか犬の遠吠(とおぼ)えが聞こえました。それは紀ノ川で船頭に預けた愛犬の声によく似ています。

(まさか!)道真は、はっとして立ち上がると、よろよろと船べりに寄(よ)って周囲を見回しました。

はるか遠くに島が一つ浮かんでいるのがみえます。

「あの島へ、あの島へ舟をつけてくれないか」道真は、船頭に頼みました。

船頭が言われたとおり、舳先(へさき)をその島へ向けると、急に元の静かな瀬戸内の海に戻りました。

すぐに舟が島に着いたので、海辺に立った道真は小高い岩を見上げ、驚いて目をこすりました。一匹の犬が身動き一つしないでたっています。

「ああ、あのとき、紀ノ川で別れ別れになった‥‥・生きていたのか」急いで岩をよじ登り、犬に抱きつきました。

ところが、それは犬ではなく犬のかたちをした石でありました。「なんと、なんと、このような姿に」道真は、すべてを悟(さと)って泣き崩(くず)れました。

それから、瀬戸内の海に浮かぶこの島は(犬島 いぬじま)と名づけられ、犬のかたちをした石は(犬石 いぬいしさま)としてまつられるようになったということです。

《 わたしの 感想 》

読んでいて、胸に熱いものがこみ上げてきました。

大宰府に流され、菅原道真は、そのとき、何処からともなく愛犬の遠吠えが聞こえました。愛犬の泣き声に導かれて、道真は命が助かりました。

犬が、主人を思う気持ちが伝わってきます。昔話は、何か教訓を教えてくれるのだと恩いました。

犬島、本島は、犬ノ島沖鼓(おきつづみ)島、地竹ノ子(じたけのこ)島、沖竹ノ子島を含めて犬島といいます。

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