【鏡騒動】(福井県)ふるさとの昔話を読んだ感想!

【鏡騒動】は、鏡を知らなかった家族の珍騒動です。《笑い話です。》

( あらすじ )

昔昔、ある小さな島でのお話です。

そこに、生まれてこのかた一度も島から出たことのない男が住んでいたそうです。ある日、男はついに知り合いの船に乗せてもらって、本土に行けることになりました。

男は大喜びで、いそいそと船に乗り込みました。船が本土の港に着くと、早速、町へ買い物に出かけました。

「やっぱり都だな。物売りたちがお殿さまの行列みたいだ。いい物があったら買って帰ろう」男は感心して、店先を眺めました。

「びっくりするようないい品はないかの」そう言いながらしばらくぶらぶら歩いていると、何やらきらきら光る板がいっぱい
吊り下げられている店がありました。

近づいてみると、なんとまぁいい男がいるではありませんか。
「こりゃまた、たいした代物(しろもの)だ」それは鏡でした。

何しろ島には鏡というものがなかったので、一度も鏡をみたことがない男はびっくりして、まじまじとそこに映っている男を見つめました。「これは、なんとも不思議だ。水のような板に、いい男が見える」男は、鏡をたいそう気に入りました。

そして、吊り下げられた鏡の裏に回って、水板の裏側をのぞいてみました。

ところが、そこには木の板がはられているだけでした。「これはますます不思議だ。天の水桶の水でできているに違いない。よし、これを買って帰って家宝にしよう」男は、へそくりをはたいて鏡を一つ買いました。

そして旅を終え、家に帰ると、「これは、大事な家宝だ。盗(ぬす)っ人(と)に盗(と)られでもしたら大変だ。

そうだ、蔵の長持ちに隠しておこう」

男は蔵に入って、鏡を長持ちの中へそっとしまいました。そして鏡のことは誰にも言わないでおきました。

それから男は、毎日朝起きては蔵に行って長持ちの中に鏡があるか確かめ、昼めしを食べては蔵に行き鏡があるか確かめ、寝る前にも蔵に行き鏡があるか確かめました。

そして鏡の無事を確かめるたびに、蔵からにこにこして出てきました。

それを見た嫁は、「お前さん、一日何度も蔵に入っているけど、何かあるのですか」と聞きました。

けれど男は、「いや、なんでもない」と答えるだけでした。

それでも、夫のことは嫁が一番よく知っています。(どうもおかしい。旅から帰ってからずっとおかしい。私に隠しごとをしているに違いない)

嫁はある日、夫が用事で遠くに出かけた隙(すき)に、蔵に行って長持ちの蓋を開けてみました。するとそこには、えらいべっびんがいました。

「夫が毎日にこにこして蔵から出てくるのは、このべっびんを本土から連れてきたからなんだ」嫁はもう悔しくて悔しくて、蔵から転がり落ちんばかりの勢いで出てきました。

そこにちょうど男が帰ってきましたから、嫁は男の胸倉(むねぐら)をつかんで、「お前さん、蔵の女は何ですか」
と聞くやいなや、顏を引っぱたくわ、噛(か)みつくわ、上を下への大騒ぎになりました。

そこへ尼さんが托鉢(たくはつ)にやってきました。

そして「これこれ、真昼間から夫婦喧嘩(ふうふげんか)など、犬も食わんではないか。やめなされ、やめなされ」
と仲裁(ちゅうさい)に入りました。

嫁は泣きながらことのわけを尼さんに話し始めました。

すると尼さんは、「それなら、私が蔵に行って確かめてこようかね」
と言って、一人で蔵に入っていきました。

尼さんが長持ちの蓋を開けると、そこには自分と同じように頭を剃(そ)って、衣(ころも)を着た女がいました。

尼さんは蔵から出てくると、「これこれ、嫁さん、もう安心しなさい。長持ちの中の女は悪いことをしたと思って改心して、私のような尼になっていたよ。夫婦喧嘩はおやめなさい」と言って、仲直りをさせました。

この島の人たちは、鏡に自分の姿が映るのを誰も知らなかったという、うそのような本当の話だそうです。

《 わたし 感想 》

今では、とても信じられないお話です。鏡を知らないことは、良くも悪くも怖いことだと思いました。

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