
【阿寒湖のマリモ】(あかんこ)アイヌの人たちが伝えたお話です。マリモの由来を伝える悲恋物語の伝説です。
( あらすじ )
昔、阿寒湖の近くの静かな村に、セトナという名前の美しい娘がいました。村長夫婦の一人娘であるセトナの家には、マニぺという青年が働いていました。セトナとマニぺはとても仲良しで、ひそかに結婚の誓いをたてていました。

マニペは、山でクマを狩るのも、アイヌの村の英雄物語であるユーカラを語るのも、村で一番うまかったです。村人たちからは勇敢で立派な男だと言われ、評判もよかったです。
「セトナ、山にきれいな花が咲いているから一諸に見にいこう」「今日は湖のほうに行ってみない、マニペ」晴れた日には手を取り合って野山を駆け回り、阿寒湖に浮かべた舟の上で、マニペの吹く草笛を聞いたりして、二人は毎日幸せでした。

ところが、ある春のこと、そんなことは何も知らない村長の父親はセトナに言いました。「セトナ、お前にふさわしい花婿を見つけてきた。副村長の息子のメカニだ。仲良くするんだよ」しかしメカニは、本当は村で一番の乱暴者でした。
セトナは大好きなマニペと離れたくなくて、悲しくて悲しくて、毎日泣いて過ごしていました。それから、悲しみのあまり食べ物が喉を通らなくなり、セトナは日ごとに痩(や)せ衰(おとろ)えていきました。
セトナの気持ちを知らない村長夫婦は、ただただうろたえ、嘆(なげ)いていました。「セトナ、どうした。何があったんだ」と聞いたけれど、セトナは使用人であるマニペとの身分違いの恋を、誰にも打ち上げることが出来ませんでした。
それからしばらくして、阿寒の山が紅葉(もみじ)に染まるころ、マニペが森へ薪(まき)を取りに出かけると、突然、後ろから誰かに刀で襲(おそ)われそうになりました。「わぁ、何をする」マニペは相手の手から刀を奪い取ると、とっさに相手を刺し殺してしまいました。
「あ…メカニ!」倒れた相手をよく見ると、それはセトナの花婿に決まっているメカニでした。セトナが本当に好きなのはマニペだと知ったメカニは、悔しくてマニペを殺そうと襲ってきたのでした。「大変なことをしてしまった」人を殺してしまった罪を、マニペは何度も悔やみました。

そしてその翌日,マニペは阿寒湖に舟を漕(こ)ぎ出し湖の真ん中までいくと、いつも吹いている草笛を心ゆくまで吹きならしてから、湖水に身を投げたのでした。それから幾日か経って、マニペの死を知ったセトナは、耐えられない悲しみを胸に抱(いだ)いて、一人岸辺にたたずみ続けました。
そうしてある日、セトナの乗った船は阿寒湖に出ていったまま、その美しい姿は村から消えたそうです。.

阿寒のおろし吹きすさぶ夜には、むせび.泣くような声と一諸に、悲しい草笛が聞こえてくるといいます。人々は、セトナとマニペがマリモになって、湖の底で幸せに暮らしているんだと言い伝えています。

このマリモ伝説をもとに、毎年十月上旬には、二人を忍ぶ祭りが行われるようになたそうです。
( わたしの 感想 )
二人は、この世では結ばれることは出来ませんでしたが、湖の底でマリモになって仲良く寄り添って幸せに暮らしていると思います。
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