
前回は★①赤毛のアンという女の子(身の上)
登場人物
●ウオルタ-・シャ-リ-(アンのお父さん)
●パーサ・シャ-リ-(アンのお母さん)
●トマスのおばさん(アンの両親が亡くなったとき、
アンをひきとったおばさん)
●トマスのおじさん(トマスのおばさんの旦那)
●ハモンドのおばさん(トマスのおばさんの次にアンを
引き取ったおばさん)
●ハモンドのおじさん(ハモンドのおばさんの旦那)
●スペンサ-夫人(マリラの友人 人づての依頼で
アンを、孤児院から連れてくる)
●ブルエット夫人(スペンサ-家の近くに住む大家族一家の
奥さん アンをひきとるという)

●アン・シャ-リ-(主人公の女の子 孤児
物語は十歳から 感受性が豊かでおしゃべり)
●マシュウ・カスパ-ト(アンを引き取る兄妹の兄
当初は六十歳 無口で女性が苦手 ずっと独身)
●マリラ・カスパ-ト(マシュウの妹 彼女もずっと独身
料理は名人級 時々頭痛を起こす)
●ギルバ-ト・プライス(初対面のときアンとはトラブルを
起こしてしまうが、本当は紳士で優等生)
●ルビ-・ギリス(アンの同級生で自他共に認める?学院一の
美人。ヒステリ-&泣き虫)
●ダイアナ・バリ-(隣に住む同い年の女の子
アンとは〈心の友〉となる 読書と歌が好き)
●バリ-夫人(ダイアナのお母さん)
●バリ-(ダイアナのお父さん)
●レィチェル・リンド(隣に住むおばさん 噂好きで
大既知っている マリラと仲良し)

★②赤毛のアンという女の子(ダイアナとの出会い 心のとも)
マリラが「アン、ダイアナが帰ってきたそうだよ。あんたもよかったら
ダイアナと近づきになったら。」
アンは、「マリラ、わたし怖いわ。」
「いよいよそのときがきたのね。もしダイアナがわたしのことを好いて
くれなかったら、っどうしょう。わたしの一生で一番悲劇的なときになるわ。」
「なんだね、だいたい、そんな言葉をむやみにつかわないでもらいたいね。
小さな女の子が使うと、よけいに滑稽(こっけい)だよ。
ダイアナがあんたを気にいっても、ダイアナのお母さんが駄目だと言ったら
どうにもならないんだよ。お行儀をよくして、
大げさな、おかしな言葉なんか使うんじゃないよ。おや、驚いた。この子震えているよ。」
実際アンは震えていたのです。
顏は真っ青になり、ひきつっていました。
二人は、ダイアナの家に行きました。
バ-リ-夫人は、背が高くて目も髪も黒い、
きりっとした口もとの美しい人でした。
子どもの躾には厳しい人だということですが、見るからにも
そんな感じでした。
ダイアナは、母ゆずりの黒い目と髪、それから血色のいい頬に、父ゆずりの
明るさをいっぱいにやどした、綺麗な女の子でした。
バ-リ-夫人は、「これがうちのダイアナよ。アンをお庭に案内して、あんたの
花を見せておあげ。」
庭は、広々として、西側のモミの木の林をぬけた夕日が、いつぱいに浴びて
いました。

アンとダイアナはオニユリの見事な花壇をはさんで向かいあったのです。
「ねえ、ダイアナ。」
ようやく、アンは両手を握りしめてささやくように言いました。
「あなた、あのう、わたしを少しは好きになれると思う?つまり、腹心(ふくしん)の
友になれるくらい。」
ダイアナはにっこり笑いました。何か言うまえに笑うのは、ダイアナの癖なのです。
「もちろん、なれると思うわ。ここは同じ年ごろの友だちが、一人もいないんですもの。」
アンは、「神に懸けて永久に友だちになるって、誓ってくださる?」
二人は神に懸けて誓いました。
ダイアナは、「あなたっておもしろい人ねぇ、変わっているって話は聞いていたけれど。
でも、わたし本当にあなたを好きになりそうだわ。」

マリラとアンが帰るとき、ダイアナが丸木橋のところまで送って来ました。
二人の少女はお互いに手をまわし、抱き合うようにして歩きました。
そして、明日の午後一諸に遊ぶ約束をして別れました。
アンは幸福でいっぱいでした。
家に入ったとたん、ちょうどマシュ-はカーモディ-の町から
もどったところでした。
「おまえがチョコレート好きだって聞いたのでな。すこしばかり
買ってきたのだよ。」

マリラの方をこわごわ伺いながらアンの手にお土産を渡したのです。
アンは、「今夜は一つだけ食べるわ。それから半分ダイアナにあげてもいい。
あげられたら、残りの半分は倍も美味しくなると思うけど。
あげるものがあると思うと、とても嬉しいの。」
そう言って二階の寝室に行ってしまった後、マリラはマシュ-に言いました。
「あの子が来てからまだ三週間だけれど、あの子がいないこの家なんて
今は考えられませんね。それ見たことかなんて顏をしないで頂戴。
あの子が日ごとに気にいってきていることも、わたしは、洗いざらい
白状しているんだから。」

アンとダイアナが連れだって学校へ行く日が来ました。
二人がつけた〈恋人たちの小道〉裏の森と谷あいの小道を抜け、
小川に出ると、ダイアが待っています。
〈すみれ谷〉とは、春になるとすみれがいっぱいになるので二人で呼び、
〈カバの道〉ははダイアナがつけました。〉
丘を、越えて曲がりくねった小道で、シラカバの木につつまれたすてきな道
です。
マツの木がはえた丘を登ると、アボンリ-の学校でした。
九月一日に学校が始まり、それから三週間した、ある朝のことです。
ダイアナが、アンに
「今日はギルバ-ト・ブライスが学校にくるわよ。
彼、もの凄くハンサムなのよ。でもね、ときどき女の子をひどく
いじめるのよ。」
アンに話していると、さらに
「ギルバ-ドは、あなたのクラスになるわよ。ギルバ-トはずっと一番
だったの。あなた、これから一番とるの難しくなるわよ、アン。」
教室でもダイアナとアンは、一つ机に並んでいました。
ギルバ-ト・プライスは女の子に自分の方をむかせるのは分けない
ことでした。
(あの赤毛のシャ-リ-とかいう、あごがとがって目がとてつもなく
大きい女の子を、こっちをむかせずにはおかんぞ。)
ギルバ-トはこのとき決心したのです。
ギルバ-トはアンの赤毛のおさげをとらえ、そのままもちあげて
はつきり聞こえるように「ニンジン、ニンジン」
はじかれたように、アンが振り返りました。
腹立ちまぎれに、にらみつけた目には悔し涙が溢れてきました。

アンが石板(せきばん)でギルバ-トの頭をたたき石板はこなごなに
砕けました。
ダイアナは息がとまりそうになって喘ぎ、ルビ-・ギリスは逆上して
泣きだしました。
フィリップス先生は「アン・シャリ-、これは一体どうしたのです。」
このとき、はっきりとギルバ-トが
「先生、僕がいけなかったのです。僕がいじめたのです。」
フィリップス先生は、まるで、その声が耳にはいらないかのように
重おもしい声で「うちの生徒がこんなにひどいかんしゃくもちで
人を許すことを知らないのは実に残念なことです。」
「アン、午後の授業が終わるまで黒板の前にいって、教壇に立って
いなさい。」
アンは真っ青な顔をして、この黒板の下にただ怒りにもえて立って
いました。
やっと、午後の授業が終わりギルバ-ド・ブライスが入口のところで
待っていました。
「アン、きみの髪の毛をからかったりして、本当にすまなかった。
あやまるよ。いつまでも怒らないでくれないか。」
アンは振り向きもしないで通りすぎました。
ダイアナが慰めるように「ギルバ-トは、どの女の子にもからかうんだから。
私の髪なんか黒いカラスだって何度言われたか知れない。それに一度
だってあやまったことがないのよ。」
アンは「カラスって言われるのと、ニンジンって言われるのでは、ひどい
違いだわ。私の気持ちを拷問にかけたのよ。」
ところが悪いときには悪いことが重なるもので、第二の事件が起きたのです。

昼休みになると、生徒たちは、マツ林の丘に出かけ、牧場の方からは
フィリップス先生の下宿している家がよく見えます。
生徒たちは、マツやにを、ガムがわりにかみながら先生を見張って食事を
すませた先生が門口(かどぐち)に姿をあらわすといっせいに学校に
向かって駆け出すのです。
子どもたちの帰り道の方が先生よりも三倍も長いので息を,
せききっても
二・三分は授業に遅れるということはいつものことでした。
フィリップス先生は、その日、この悪い習慣を改めようと決心したので昼食に
出かける前に「わたしが、もどったときには皆自分の席について下さい。
遅れた人は罰を受けるでしょう。」
その日も、男の子が全部と女の子が何人かマツやにガムを、ちょっと
〈ひとかみ〉するためにでかけました。
アンは、林の遠いはし草にうずもれて一人頭に野草花輪をのせて妖精の
ように歌いながら楽しんでいたのです。
ジミ-の声を聞いて我に返り小鹿のように学校の入口で男子生徒に
追いつき、ひとかたまりになって教室に飛び込んだのです。
フィリップス先生は、男の生徒を罰するのは面倒になっていましたが、何も
しないのも筋がとおりません。

そこで、一人代表のいけにえに「アン・シャ-リ-、あなたは男の子と
いるのが好きなようですね。」
皮肉タップリに「その頭の花輪をとって、ギルバ-トブライスの隣に
すわりなさい。」
ダイアナは、アンに同情して真っ青になり
アンは、
「先生、本気でおっしゃったのではないと思いました。」
「本気ですとも。」この皮肉な調子はどの生徒も我慢できないほどの
ものでした。
アンにとつても、これは我慢できないことでした。
自分だけ罰られギルバ-ト・ブライスと一諸に、すわるなんて我慢できない
ほどの侮辱でした。

授業がすむと、アンは教科書だのノートだのすべて取り出し壊れた
石板の上に積み上げました。
「わたし、学校にはもうこないつもりよ。」
ダイアナは今にも泣きだしそうになりました。
アンは家にもどっても、がんとしてフィリップス先生がいる学校には行く気は
ないと言い張りました。
アンの声は落ちついているように見えますが、深く決心し、
考えを変えさせるには容易でないと知ったマリラは、レイチェル夫人に
相談してみようと思いつきました。
(十人も子どもを学校にやったレイチェルだ。何かいい考えがあるだろう。)
夕方マリラがたずねるとレィチェル・リンド夫人は、もう事件の
ことは知っていました。
「しばらくは、そっとしておくことですね。」
「どうも、これはフィリップス先生の方がよくないようですよ。アンが、かんしゃくを
起こしたとき罰したのは、正しいが遅刻は同じように遅れたものを罰すべきもので
罰として女の子を、男の子とならばせるのはよくありません。生徒たちも皆アンに
同情していたそうですよ。アンは、中々人気があるのね。」

こうしてマリラは、アンに学校へ行けとはいわなくなったのです。
次回★③赤毛という女の子(お茶の招待・心あらたに)
宜しくお願いいたします。
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