【百合若大臣】日本民話を、読んだ感想!

江戸時代に浄瑠璃の題目にもなった、

【百合若大臣】は

大分県などに伝わる伝説です。

.

蒙古襲来において活躍したにも関わらず、

部下の裏切りにあった英雄の復讐劇です。

《あらすじ》

むかし、九州に百合若(ゆりわか)という名の

大臣がいたそうです。

百合若は並み外れた力持ちで、大きな鉄の弓を引く

名人でした。

そして春日姫(かすがひめ)という、

たいそう美しい妻を迎え、

緑丸(みどりまる)と名づけた鷹(たか)と一諸に、

幸せに暮らしていました。

百合若には、たくさんの家来がいましたが、

中でも別府兄弟は一番の家来でした。

ところが、

その別府兄弟は百合若の幸せをねたましく

思っていて、あるとき、

大臣の座と美しい妻を狙(ねら)って悪だくみを

考えました。

「兄さん、百合若さえいなくなれば、一番の家来である

おれたちが、大臣になれますよ」

「そうだな、あの美しい春日姫もおれたちのものに

してしまおう」

ちょうど、その頃、

百合若は九州の海を荒(あ)らし回っていた海賊(かいぞく)を

退治することになりました。

百合若は、別府兄弟を副大将にたてると

春日姫と緑丸にしばしの別れを告げ、玄界灘(げんかいなだ)へと

出発しました。

やがて海賊をすべて退治した百合若たちは、帰路の途中(とちゅう)、

無人島で休むことにしました。

「弟よ、絶好の機会だな」

「兄さん、いよいよやるのか」

「ああ、この機を逃(のが)してはならない。

おれたち別府兄弟が百合若に取って代わるのだ」

その夜、久しぶりに酒に酔ってうとうと、し始めた百合若を見て、

別府兄弟は、ほくそ笑みました。

百合若は眠り始めると七日間、まったくも目を覚まさない。

そのことを二人は知っていました。

翌朝、別府兄弟は、

「残念ながら百合若さまは、亡くなられた。一刻も早く国に

戻(もど)って、このことを春日姫さまに報告しなくっては

ならない」

と他の家来に言うと、眠っていた百合若を洞穴(ほらあな)に

隠(かく)して、帰ってしいました。

国に着いた別府兄弟の兄は、春日姫に言いました。

「百合若さまは海賊と戦ったときの傷がもとで、

お亡くなりになりました。

百合若さまは最期に、国と春日姫さまを頼(たの)むと、

私に遺言(ゆいごん)」なされました。

それから形見として、この鉄の弓を持って帰って

参りました」

すると春日姫は、

「百合若さまは並みのお方ではありません。

あなた方が生きて帰ってきたのに、百合若さまが亡くなった

とは信じられません。

ましてや、あなたと夫婦になることなど到底(とうてい)

考えられません」

と言いました。

いつまで経っても百合若の死を認めない春日姫を、

怒った別府兄弟は

牢屋(ろうや)に閉じ込めました。

一方、無人島で七日の眠りから覚めた百合若は驚きました。

「おい、皆のものはいずこじゃ」

島中どこを探しても、一人も家来がいない。

船も見当たらない。

「なんということだ」

百合若はしばらく呆然(ぼうぜん)として海を眺(なが)めていたが、

すぐに、

「国に帰るために、ここでなんとしてでもいきながらえなくては」

と気を取り直しました。

百合若は身につけていた刀で、魚や貝を捕(と)って食いつなぎ

ました。

そんなある日、海のむこうから鳥が一羽飛んでくるのが

見えました。

「おお、緑丸ではないか」

百合若の肩にばさりと乗ったのは、かわいがっていた鷹の

緑丸でした。

見ると、緑丸の足に手紙がくくりつけてありました。

それは牢屋に入れられた春日姫が書いたものでした。

春日姫の手紙を読んで、百合若にはことの成り行きが分かりました。

「おのれ、別府兄弟め、許してはおけぬ。緑丸、春日姫の

もとへ手紙を届けておくれ」

百合若は、刀で自分の指を切ると、滴(したた)り落ちる血で

木の葉に手紙を書き、それを緑丸の

足にくくりつけて、ふたたび春日姫のもとに飛び立たせました。

こうして何日も、無人島での生活が続いたある日のこと、

一艘(いっそう)の船が近くを通りかかりました。

「おおい。おおい。乗せてくれえ」

百合若は力の限り声を上げ、手を振りました。

ようやく船は気づいたようだったが、長い無人島での生活で、髪もひげも

ぼうぼうに伸び、肌は真っ黒に日焼けして鬼のようになっていた

百合若の姿に驚いて、なかなか近づいてくれません。

「おおい、おおい、私は人間だ。助けてくれ」

ようやく百合若は船に乗せてもらい、国に帰ることができました。

戻ってみると、百合若の後を継いで別府兄弟が大臣になっていました。

ところが、別府兄弟は国を治めるどころか遊んでばかりいたので、

どこもかしこもすっかり、荒れ果てていました。

まもなく百合若は鬼のような姿のまま、誰にも気づかれずに

別府兄弟の門番になりました。

やがて、年もかわり、屋敷(やしき)では正月行事の

弓の競技が催(もよお)

されることになりました。

門番である百合若は矢拾(やびろ)いをさせられていたが、

弓を射る家来や、別府兄弟を見ると大笑いしました。

家来の一人が

「きさま、何がおかしい」

と怒鳴ると百合若は、

「皆さまの腕前(うでまえ)があまりに下手なので、ついつい

笑ってしまいました。」

と言いました。

「なに、そこまでいうならお前が射てみよ。うまくできなければ命はないぞ」

「では、弓矢を貸していただきましょう」

百合若が借りた弓を引くと、あまりの力の強さに弓は、竹串のように

折れてしまいました。

「これらの弓では使い物になりません。あの床(とこ)の間(ま)にある

鉄の弓をお貸しください」

と言って指差しました。

すると、家来は笑いました。

「ばかなことを言うな。あの鉄の弓は亡くなった百合若さまのものだ。

お前なんぞ引けるものではない」

「いいえ、私が必ず引いてご覧にいれます」

百合若は鉄の弓を借りると、キリキリと引き絞り、

「この私が百合若だ」

と叫ぶといきなり、別府兄弟を一矢で射ぬきました。

「百合若さま!」

「百合若さまは生きていらした!」

家来たちは、たいそう喜びました。

こうして百合若は、ふたたび九州の大臣となり、

春日姫と幸せに暮らしました。

《私の感想》

【百合若大臣】は

伝説ですが、武者にまつわる復讐譚。

民話(昔ばなし)には

数万年も前から語り伝えた話があり、

歴史があります。

民話(昔ばなし)には夢と希望があり、

心も豊かになります。

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