【しっぺい太郎】(長野県)ふるさとの昔話を読んだだ感想!

【しっぺい太郎】は、しっぺい太郎と呼ばれる犬が毎年いけにえを要求してきた三匹の大猿を退治するお話です。

《 あらすじ 》

昔昔、信濃(しなの)にある光前寺(こうぜんじ)という寺の縁の下に山犬が住みつき、やがて五匹の子犬を生みました。

情け深い住職は、その犬の親子に食べ物を与えたり、わらを敷(し)いてやったりしていました。
五匹の子犬はすくすくと育ち、やがて境内(けいだい)を元気よく走り回るようになりました。

しばらくして、母犬は子犬を連れて山に帰りましたが、住職へのお礼のつもりなのか、一匹だけ子犬を残していきました。

それはとても足の速い子犬だったので、住職は「早太郎(はやたろう)」と名づけ、それはそれはかわいがって育てました。

「早太郎、一諸に村のほうへ行ってみようか」
「早太郎、今日は長者の家にお経を唱えに行くぞ」
早太郎は、住職が村へ行くと言えば一諸について行き、お経を唱えている間は外でちょこんと座って待っている、賢(かしこ)い犬へと成長しました。
また、寺にクマなどが近づいたときは、まるで風のようにすばやく追い払ってくれるので、いつしか「疾風(しっぺい)太郎」と呼ばれるようになりました。

ちょうどそのころ、天竜川の河口(かこう)近くにある神社の(ほこら)に怪物が棲(す)みついて、近くに住む村人たちを困らせていました。
怪物は村に現れては、農作物を荒(あ)らすので、村人たちは怪物の悪行をおさえるため、一年に一度の祭のたびに、泣く泣く子どもをいけにえとして捧(ささ)げていました。

この年も、くじで決まった子どもが箱に入れられ、いけにえとして祭壇(さいだん)に供えられました。
そんなある日、一人の修行僧(しゅぎょうそう)が、「私が怪物を退治しましょう」
と言って、祭壇近くの上に隠(かく)れて、怪物が来るのを見張っていました。
夜もふけたころ、ザワザワと気の葉が揺(ゆ)れ、生あたたかい風が吹(ふ)いてきたかと思うと、祠がガタガタと揺れ出して、突然、三匹の怪物が飛び出してきました。
怪物はいけにえの子どもが入れられた箱の周りでうれしそうに踊(おど)りだしました。

そしてそのうちの一匹があたりを見回しながら、「今夜、信濃の疾風太郎は来るまいなあ」
と問うと、他の二匹が「来るまい、来るまい」と答えました。
「それならうれしいぞ」
怪物たちは箱の中から子どもを抱(かか)え出すと、あっという間に祠に戻(もど)っていきました。
木の上から見ていた修行僧は、恐(おそ)ろしくって生きた心地がしませんでした。

夜が明けてやっとわれに返ると、怪物が言っていた言葉をつぶやきました。
「怪物は«今夜、信濃の疾風太郎は来るまいなあ»と言っていたな。信濃の疾風太郎とは誰だ。疾風太郎を探さねばならぬ」
修行僧は早速、旅支度(たびじたく)をして信濃へとむかいました。

それから会う人会う人に「疾風太郎を知りませんか」「疾風太郎を知りませんか」
と訪ね歩きました。
しかし、疾風太郎を知っている人は誰もいません。
修行僧は何日も、何ケ月も探し続けました。
そしてとうとう、次の祭りまであと一月ほどに迫(せま)ったころ、修行僧はいつものように通りがかりの男に聞いてみました。
「このあたりで疾風太郎という名前を聞いたことはありませんか」
すると男は
「ああ、それならたしか光前寺の早太郎を、小僧さんたちが疾風太郎と呼んでいたなあ」
と答えました。

「本当ですか。それはどんな人ですか」

と、はやる気持ちで修行僧が聞くと、
「いや、疾風太郎は寺で飼われている山犬だよ」
修行僧は喜んだのも束の間、がっくり肩を落としてしまいました。
けれど、
(いや、たとえ山犬でも、疾風太郎と呼ばれているなら何か縁があるに違いない)
と思い直して光前寺にむかいました。
修行僧は、光前寺の住職に会うと、ことの次第を話しました。
噺を聞き終えた住職は、早速、疾風太郎を呼んで
「疾風太郎よ、神社に行って、手助けをしておあげなさい」
と言いました。
すると疾風太郎は賢そうな目で住職を見て、承知しましたと言っているかのように尻尾(しっぽ)を振りました。
こうして、修行僧は疾風太郎を連れて、神社へとむかいました。

祭を翌日に控(ひか)えた神社に着くと、修行僧はいけにえの子どもの代わりに疾風太郎を箱へ入れ、祭壇に供えました。
それから祭壇近くの木の上に隠れて、怪物が来るのを見張っていました。

夜もふけたころ、ザワザワと木の葉が揺れ、生あたたかい風が吹いてきたかと思うと、祠がガタガタ揺れ出して、三匹の怪物が飛び出してきました。

そして箱の周りでうれしそうに踊り出しました。
一匹の怪物が、
「今夜信濃の疾風太郎は来るまいなあ」
と問うと、二匹が、
「来るまい、来るまい」
と答えました。
そして、
「まさか来るまい、安心じゃ」
と言って、怪物が箱に手をかけたそのとき、箱の蓋(ふた)を破って疾風太郎が飛び出しました。
あたりは怪物たちのすさまじい叫び声と、疾風太郎の吠(ほ)える声、そして祭壇の壊(こわ)れる音が鳴り響きました。
修行僧は恐ろしくて目が開けていられません。
ただ一心に祈るばかりでした。
やがて、一匹の怪物が大きな音を立ててどすんとたおれました。
まもなく、二匹目の怪物も倒れる音が聞こえました。
そして空が明るくなり始めたころ、最後の怪物が力尽きて崩れ落ちました。

修行僧が朝日に照らされた怪物をみると、それは年をとった大きなサルの化け物でありました。
疾風太郎が血まみれになって倒れていました。
「疾風太郎!」
修行僧は急いで駆け寄りましたが、疾風太郎の息はもう絶えていました。
「ああ、何と言うことだ。命が尽きるまで戦ってくれたのか。許してくれ、疾風太郎」

修行僧は疾風太郎を抱きしめて泣き崩れました。
それから亡骸(なきがら)を信濃の光前寺に届けました。
光前寺の住職は疾風太郎を手厚く葬(ほうむ)り供養(くよう)しました。

疾風太郎の墓には、今でも、香(こう)と花が絶えることがないそうです。

《 わたしの感想 》

しっぺい太郎は、長野県では早太郎と呼ばれ魔物を退治する犬です。
興味深いお話で心が熱く湧き上がってきました。

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